2015年10月26日月曜日

競技者の目線から
10月24、25日と滋賀県佐波江、ローカス琵琶湖店のビーチで行われたJPKAカイトレーシング・オールジャパン琵琶湖に行ってきました。今回は現地に行ってみたらスタッフの手が足りている模様だったので、この機会にと思い、急遽TT(ツインチップ、以下TT)クラスでエントリーさせてもらいました。前々から一度選手として走って、選手目線での大会風景、何が選手に求められているか、勝つための戦術などを体験、検証してみたいと思っていたので好機と思った次第です。というわけで、今回は自分のレースに集中しまくったので、滅茶苦茶TTクラスに偏ったレポートです。もちろん、フォイルボードクラス、レースボードクラスとも相変わらず熱い戦いが繰り広げられたのですが、すみません、見ていなかったので、割愛ご容赦ください。今回はTT特集です(笑)。
10月24日
24日は午後3時くらいから風が上がってくるという予報に併せて、準備が進行しましたが、レースボード、ハイドロフォイルはなんとかアップウインドが取れるものの、ツインチップではビッグサイズのラムエアー&微風用160x48クラスのボードでやっとアップウインドが取れる状態。今回手持ちのカイトは最大クロノV2 15.0に、ボードはアクシス、パトロール148x47、この組み合わせだと、この風ではアビームで走るのがやっとという状況。セッティングが出ないで上げあぐねていた谷口選手のクロノ18のセッティング出しをして、すいすいアップウインドしていくのを見送りながら、「はっ…俺もしかして競技者目線では、まんまとライバルに塩を送っちゃった?」などと思っているうちにスタート10分前のフラッグが上がり、スタートシークエンスが否応無く始まってしまいました。今大会からスタートラインはスタート開始から4分間で閉じられるようになったため、もたもたしていたらスタートすら切れなくなってしまいます。ここで幸いだったのはひたすら遠浅が続く佐波江ビーチの地形。風向きが若干スタートラインに対してクロスしていたので、遠浅のビーチをぎりぎり沖まで歩けば、スタートラインをアビームで切れる位置まで移動できたのです。からくも時間内に下側のスタートブイぎりぎり内側を通ってスタートした後は、そのままひたすら沖までレグを伸ばして、アップウインド出来る風を探しますが、レース的には膨大な時間を費やして帰ってきたら同じ所(涙)…。今度はコース東側を深くまで探っていくと、位置的な状況なのか、時間的な問題なのか、若干アップウインドが取れ始めました。基本的に河口があるとサーマルウインドはそこに収束する傾向があるので、日野川の河口がワークしているなと思い、その辺りを主戦場にアップウインドしていくとじわじわと上マーカーに近づき始めました。僕のセットでそんな状況であれば当然、カイトもボードも大きいライバル達は余裕で上マーカーを廻ってダウンウインドレグに入っています。「あ?あ、競技デビュー第一ヒートはDNF(規定時間内にフィニッシュラインを切れないこと)かぁ。」と嘆きつつ、でも明日の練習も兼ねて時間をかけてでもコースは回っておこうと思い、じりじりアップウインドしていると次第に風が上がり、なんとか、コースを回る事は出来ました。ちなみに、このヒート、そこまでの絶望的に弱い風に、レースは無いだろうと思って岸に上がっていた多くの選手がスタート・シークエンスの開始を見落として、DNS(規定時間内にスタート出来ず)の憂き目をくらい、波乱の幕開けとなりました。
10月25日第一ヒート

24日の夕方から吹き上がった風は一晩中吹き続け、25日は朝から木の幹が揺れるほどのど強風。各選手とも、ここまで吹き上がる事は想定していなかったので、朝から使用するカイトの選定で大わらわ。僕は用意しておいたクロノV2 7.0を杉原選手に、エッジV8 7.0をX-FLYの若手に渡して、自身は杉原選手のエッジ2015 7.0を借り、ボードはアクシス、ヴァンガード137x42で出艇しました。事前の練習で、この日、このセットだと、コースの西側、風が吹き抜けているエリアは若干オーバーで、ブローが来るとエッジが抜け気味になる事がわかっていたので、自分の主戦場はコース東側と決めていました。問題はスタート方向で、本当はコース西側からポートスタート(風を進行方向左側から受けてスタートラインを切る事)したかったのですが、どのレベルでスタボースタートの選手とかち合ってしまうのか経験が不足している事(かちあってしまったらスタボーの選手が優先)、またデビュー戦でいきなり奇策をとって外しても格好悪いな…との思いからスタボースタートを選択。ただ、集団に巻き込まれると間違い無く、動きが取れずに、行きたくないコース西側に連れて行かれるので、わざと最後尾からスタートして、スタートラインを切った直後にターン。ポートスタート組に合流するという策を取ってみました。快適な一人旅でアップウインドレグをこなし、折り返すと、おそらくトップを走っているであろうTTクラス常勝の佐藤選手と良い位置で交差したので、タクティクスの正しさを確信し、上マーカーを佐藤選手とほぼ同時に周回。すぐさま、トリムを伸ばし、カイトをダウンウインド方向に加速させながらダウンウインドレグに入る…と意外な事に気がつきました。佐藤選手が追いついて来ない…。勝手な想像をさせてもらうと、佐藤選手はこの日、サイズの準備が無かったのか、ソニックではなくて、スピードあたりかな? レース専用チューニングでは無いであろうカイトを使っていました。意外と皆さん知らない方が多いと思いますが、レース用カイトというのはアップウインド性能だけでは無くて、ダウンウインド性能も考慮してチューニングが施されているのですが、ライン・テンションが緩むとカイトの形が保てないラムエアーカイトでダウンウインド向けチューニングを施していないものは、急激なダウン・ウインドに著しく弱いのです。逆にこちらはダウンウインド性能とセッティングをすでに良く知っているエッジに、実は事前のフリーライドでチョッピーな海面でのトップスピードとダウンウインド時の安定性で非凡な性能を発揮する事を確認していたヴァンガードの組み合わせなので、ダウンウインドの速度差はかなり有っただろうと思います。ダウンウインド・レグでの速度差が確認出来た事で、この後のヒートはだいぶ楽になりました。要はアップウインドレグで大差をつけられなければダウンウインド・レグで抜けるからです。抜き返される心配が無くなった時点で、安全運転に切り替えて、危なげなくトップゴールして第一ヒートは終了でした。
第二ヒート
第二ヒートはスタート直前で佐藤選手がカイトを落とすというトラブルに見舞われ出遅れたため、だいぶ楽に回れました。でも敵もさる者、谷口選手が僕の第一ヒートで取った策を見抜き、同じようにスタート直後にターンして同じコースを走り、上マークまで結構良いペースで食らいついてきました。しかし、いかんせん、この日谷口選手の使っていたカイトはRPM。エッジを相手にレースの場で勝負したら、不利は免れません。結局ゴールまで背後を脅かされる事無く、第二ヒートもトップでゴール。この辺りで、「4ヒート出来て、昨日のレースをカットできたら優勝の目があるな…」という見通しが立ってきました。でも、ちょっと油断してしまったか、次のヒートは「やっぱり、甘くは無いな」と思い知らされます。
第三ヒート
第三ヒートは少し油断が有りました。多少マークされていた事もあるのか、集団の中でスタボー・スタートをする状況になってしまったのです。一瞬迷った隙に佐藤選手に上側に離され、隙を見てターンして、いつものコースに戻ったものの、後れを取ってしまいました。アップウインド・レグでは佐藤選手にアドバンテージがあるのが判っているので、後は焦らずに出来るだけ離されないよう、進めますが、今回ひたすら失敗続きだった上マークの見切りがここでも甘く、無駄に上まで回りすぎ、上マークを回った時にはすでに佐藤選手はダウンウインドレグを3分の2ほど下っている状態。猛然と追いましたが、キャッチアップは叶わず、このヒートは2位。勝ち越すには次の第4ヒートを1位でフィニッシュする事が必須条件になりました。
第4ヒート
クラス優勝とは言え勝敗を分けるヒートだから、そろそろ我を張ってイイよね? と自分の中で納得した上で、第4ヒートは端からポートスタートの体制で待機しました。もちろんライバルが放っておいてくれるわけもなく、谷口選手はきっちりポートスタートの位置に入っています。佐藤選手は少々迷いでも有ったのか? スタート時間を誤ったのか? ポートスタートながら若干下側からスタートを切りました。この時点での佐藤選手のタクティクスはアップウインドレグで出来るだけ僕を引き離す事。僕のタクティクスはダウンウインドレグで追い抜ける位置で上マークを回る事です。ところが、スタート時のアドバンテージに助けられて良い位置で上マーク直前まで行ったのにもかかわらず、またもや、つい上マークの見切りに失敗して、佐藤選手が上マークを回るのを目の前にしながら微調整を強いられる羽目に…「あ?、こんな大事なヒートで! 俺のバカバカ!」とか思いながら猛然と上マークを回った時点で、佐藤選手はダウンウインドレグの約3分の1を進んだところ。直前のヒートの経験から、この差はキャッチアップ可能と判断して、猛然と追走を開始し、ぎりぎり下マークを回る所で佐藤選手を捉え、マークを廻りざまに交わす事に成功。アビームレグのトップスピードは確実にこちらの方が速い事が解っていたので、そのままトップススピードでフィニッシュラインをカットして、大会通算での勝ち越しに成功しました。
TTクラス優勝
さすがに朝からの連続4ヒートで、体力的にしんどくなってきたのでゴールした後、大の字になって水上に浮かびながら、次のヒートに備えて体力を回復させます。いつまでもプカプカ浮いていても迷惑なので、一休みしたら、他のクラスの動向などを見ながらコース外を流していると本部艇にスタート延長の旗が揚がりました。ブイの位置でも動かすのかな? と思っていたら、ビーチに戻る事を指示する旗が揚がりました。ビーチで尋ねると、これ以上風が上がると、マークブイを回収出来なくなる恐れがあるので本日のレースは終了とのこと。この後延々続くと予想していた佐藤選手との優勝争いに備えて、温存しておいた体力と集中力がすっと抜けて、かくんと膝が抜けました(笑)。

今回、初めてカイトのコースレースというものに自ら参加して、選手目線で、その楽しさ、難しさを体感出来た事は大変貴重な体験となりました。やっぱり、実力が伯仲する選手と互いの手の内を探り合いながらぎりぎりの戦いを繰り広げるのはたまらない面白さがあります。JPKAのこのレースシリーズでは、来季、4戦を計画し、新人が楽しく戦って帰れるようノービスクラスの新設も考慮したレギュレーションを準備しているようです。少なくとも、そのクラスでは、普段レースに参加していないカイトボーダーの装備やスキルでも、こういったレースの楽しさを体感して帰れるものになるはずです。これを読んで、「あ、ちょっと面白そう!」と思ったカイトボーダーの皆さん、来季は是非カイト・コースレースにチャレンジしてみてくださいね!



2015年10月5日月曜日

スロカ・カーボン・ハイドロフォイル ファーストインプレッション





スロカから届いた新しいカーボン・ハイドロフォイルを昨日試してみたので、現時点で感じられた印象などをまとめてみました。
まず全体的なラインナップとスペックから。従来モデルのアルミニウム・ハイドロフォイルは、主翼にグラスファイバー製イージー・ウイング、胴体はアルミニウム、尾翼もグラスファイバー製で形状は全モデル共通、マストは80cmのアルミ製です。そして、今回入荷してきたカーボン・ハイドロフォイルは主翼にカーボン製インターミディエイト・ウイング、胴体はチタン、尾翼もカーボン製ですが、形状は変わらず、そして、マストは95cmのカーボン製です。今回の荷物では、それ以外に、グラスファイバー製インターミディエイト・ウイングが入荷しました。これはカーボンモデルの主翼と形状は同じで素材がグラスファイバーになったアルミニウム・ハイドロフォイル用のオプション・バーツです。最終的なラインナップとしては、これに、カーボン製レース・ウイングが加わってカイト用ハイドロフォイルのラインナップが完成予定です。
さて、主翼の形状や各パーツの重量はオゾン・カイト・ジャパンですでに書いたので、今回は早速乗り味から。まず取り回し、地上で持ち歩く時やスタート前の取り回しですが、カーボンモデルになったからといって、決して軽くはなっていません! 主翼と尾翼は確実に軽量化されて、マストも15cm長くなったにもかかわらず、150g軽量化されていますが、いかんせん、胴体をアルミ(比重2.7)>>> チタン(比重4.5)に変えているので、カーボンで稼いだ軽さを全て相殺してしまっています。え〜、じゃ何故チタン?? という意見についてはブルーノに聞いておきますね。ちなみに、なぜ胴体をカーボンにしないのか? については、主翼を支える構造の強度に全幅の信頼を寄せられないという判断だそうです。たしかに、国内のハイドロフォイル・ユーザーを見ても、ネジの締めすぎなどで、負荷がかかって壊れてくるのは、この胴体部分のようです。また、ハイドロフォイル部分の重量が軽すぎても不安定になるという意見もあるようです。
スタート前のビーチからエントリーする段階で、15cm伸びたマストの影響は早速出て来ます。単純な話、より深いところまで移動しないとスタート出来ません。身長172cmの僕の場合、お腹の上あたりまで水深があればOKだったのが、胸の深さまで必要になります。僅かにこれだけの差ですが、浮力体を身につけ、カイトに体を釣られながらエントリーするとき、この付近の15cmが、どれだけ大きな影響を与えるかはカイトボーダーならすぐわかりますよね。もちろん、ボディドラッグで深いところまで移動してしまえば、なんら問題はありませんが、ハイドロフォイルのボディドラッグを習得していないビギナーにとって、マストの長さ80cmはやっぱり意味のある長さだと思います。
スタートから滑走に入るまで全体的なフィーリングはイージーウイングとそれほど変わりません。特段難しくなったとも感じられないし、劇的に速くなったり、動きがキレキレになったりという事もありません。いくつかの明かな変化を除いては…
まず、長くなったマストの効果、これは顕著です。ボードの高さ調整を多少ルーズにしても、フォイルが水上に出てしまう心配が無いので、楽にライディングが楽しめます。もっとも、これは当たり前の話。明かな変化の1つは、ウイングの速度と浮力の関係です。イージーウイングでは速度が増すと、自然に浮力が増し、ボードが浮き上がります。さらに速度が上がると、浮き上がろうとするボードをがっつり押さえて走らなければならないので、特にアップウインドレグで速度を上げたい時などは、結構脚力とバランスコントロールを要求されます。その点インターミディエート・ウイングは浮力(ボードの高さコントロール)と前進速度がイージーウイングよりも独立しているフィーリングで、たとえば、極端な話、ボードを水につけたまま結構な速度まで安定して走り続ける事が出来ます。スポッツを借りた時にオーナーが、ボードを浮かせるのに単純に速度を稼ぐのでは無く、一度浮かせる操作を入れてあげてから高さを調節して滑走に入るというアドバイスをくれましたが、まさにその感じ。よりハイスピードで自分の好みの高さを維持して走れるという印象です。明かな変化を感じたもう一点は、浮いたまま進路を変えていく時の安定性の向上。イージーウイングは直進は極めて安定していてイージーなのだけど、ターンに入る時の挙動が速度によって変化して、少し予測しきれないところがあり、ジャイブやダウンウインドからアップウインドへの切り替え操作の練習(速度に乗せたダウンウインドから急激にアップウインドに切り替えると余分な浮力をもてあまして制御が難しい)などに少々難しさを感じていましたが、インターミディエート・ウイングはその点、ぐっと操作性と安定感が増しています。
たぶん、こう書くと、きっと、なぁんだ、じゃ最初からインターミディエート・ウイング(orカーボン・モデル)で練習すればいいんじゃない? と思う向きも多いかと思います。ま、それも1つの手段ですが、もし、まだハイドロフォイルに乗った事が無い人がそう考えているとしたら、ハイドロフォイルの練習を始める段階でいかに自分が何も出来ない状態からスタートするかを甘く見ているかもしれません。
まず、自分の定番ビーチを思い浮かべてみてください。スムーズに深い所まで移動出来るところならマストが80cmである必要はないかもしれません。それでもなお、スタートする前にウイングに足をぶつけて切ってしまう可能性は95cmの方が高いです(ボード下80cmに比べ、95cmはより足が広範囲に動く位置になります。実際これまで80cmで一度も切った事が無い足を今回ちょっとぶつけて切ってしまいました。)。なんとかスタート位置まで移動してウォータースタートした後に、速度が乗れば自然に浮いてきてくれるウイングと、浮かせる操作が必要なウイングとでは、どちらがビギナーにとって楽かは一目瞭然です(ビギナーは一度浮かせる操作をしたら、だいたいフォイルが水上に飛び出すまで浮かせちゃいます。)。だから、よほど自身があるので無ければ、ハイドロフォイルは素直にビギナー用の装備から練習を始めた方が良いと思います。心配しなくてもスロカの製品はビギナー用からレース用までパーツの交換で徐々にアップグレードしていけます。
今回はレッスンの合間に15分程度、それぞれ2回乗った上でのインプレなので、まずは雑白な第一印象のみ。ところで、この二回目のライディングですが、風が落ちて、レッスン終了し、沖に出ていたゼファーやエッジもほうほうの体で引き上げて来て波打ち際にボトボトカイトを落としている状態で出艇。クロノV2 15.0で普通に走る事が出来ました。微風限界の強さはイージーウイングから変わらず健在です。もっとも上がってきたらさすがのクロノも飛び続ける事が出来ずにくしゃくしゃになって落ちてしまいましたが(^_^;)