2015年9月3日木曜日

クロノV2 7.0 インプレ


一昨日届いたクロノV2、昨日午後から雨が上がったのを見計らい、早速試してきたのでインプレッションをまとめてみた。

クロノV2は、衝撃的な微風性能とレースでの圧倒的なリザルトで、カイトボード界におけるフォイル・カイトへの見方を、ものの見事に塗り替えた「クロノ」が全面的な改良を施されて生まれ変わった第二世代モデルだ。恐ろしく細長く、スモールサイズは若干神経質な挙動を残し、時にユーザーに特別な取扱を要求する先代に比べ、V2はセッティングからライディングまで、あらゆる面での取り扱い易さと、飛行中の安定性に注力して仕上げられたと聞いている。実はすでに7月の頭にスペインで映像撮りの現場に立ち会い、現物は一度目にしている。ただ、あいにくその時は撮影最優先で、自分で飛ばす事は出来なかった。ようやく手に入れた現物を手に、わくわくしながら僕は海に向かった。
折からの前線通過で、風は強めの南南西8~9m。昨晩から風が吹き続けているので海面はチョッピーで、すでにライディングしていた仲間の言によると、レオ9でジャストアンダーからオーバーで結構ガスティとのこと。予想通りのコンディションに、持参した7.0を早速広げてみる。バッグの形状やカイトの外観はR1に非常に良く似ている。それもその筈、R1とクロノV2は、もともとクロノ2を作る為に用意された複数のプロトタイプから、それぞれ違う道を歩む事になった兄弟カイトであるからだ。カイトを広げ風上を折り曲げ砂を載せ、ブライダルをチェックする。クロノV2はクロノやR1と異なり、サスペンション・ラインに被覆のある少し太めのラインを使用している。ブライダルを持ち上げてピンと張るだけで、絡みはぱらぱらとほどけるので、扱いは相当楽になっている。実は取扱だけでは無く、被覆があるだけで、ラインの寿命もぐっと伸びる。また、傷がつく時にはたいがい被覆が傷つくので、破断してしまう前に交換の必要に気付くのも慣れないユーザーには優しいポイントだ。
バーは2015タイプのフォイル・バーに500/300kgの25mライン。R1のコンプリートが300/300kgのレース・ラインであるのに対して、やはりクロノV2は耐久性重視だ。バーはレース用とフリーライド用があるが、それぞれ、2015コンタクト・ウォーター・バーにフォイル用のブレークハンドルを取りつけた仕様になっている。つまり、インフレータブル用のコンタクト・バーにブレークハンドルを取りつけてフォイル・カイトに使う事も、フォイル用バーでインフレータブルを飛ばす事も双方問題が無いという事だ。今回、7.0の試乗カイトに僕はフリーライド・バーを選択した。理由は後ほどライディングのインプレッションで述べる事とする。
ランチング
風が強いので、カイトをエッジよりから上げる。実はフォイル・カイトのランチングはいつでもまっすぐ風下から上げると勘違いされている向きがあるのだが、それは間違い。風が強い時はやっぱりエッジ・オブ・ザウインドから上げる。どうするかというと、カイトの風上側のチップを折り曲げて、砂を載せスパン方向が風に沿うように広げてやる。そこからラインをまっすぐアビーム方向から30〜40度くらい風上に伸ばし、準備が出来たらカイトの風下側から風をはらむようにゆっくりとラインを張ってやる。するとカイトが風を受けて、砂を載せたチップを基点に立ち上がるので、その状態でバランスをとってやりながら、砂を払い落とし、ゆっくりカイトを上げてやるのだ。試してみると、あんまり簡単なんで、みんなびっくりするだろうと思う。
でクロノV2を上げてみたところ、びっくりしたのは僕の方だった。クロノV2はラインを張った途端あっという間にカイト全体に空気を取り込み、わざとバー操作をルーズにしたのにチップが潰れるような事もなく、スッとランチングしてしまったのだ。ランチングが楽になるとオゾンの担当者に聞かされていたが、まさか、これほどとは…という程のあっけなさだった。
空中のカイトを見上げると、アスペクト比はR1やクロノよりも抑えられている事が見て取れる。翼としてのスペックをオゾンは発表していないが、ハイアスペクトの矩形翼を連想させたクロノに比べ、曲線の美しい楕円翼に近い。バー操作に対する反応は予想外にマイルド。実はフォイルカイトのスモールサイズを飛ばす時に危惧していたのは、ハンドリングがピーキーになってしまわないか? という点だった。ラムエアーカイトはトレーリング・エッジを引き込んでターンするという仕組み上、小さいサイズの操作性は神経質でピーキーになりがちなのだ。その点、こいつは、実に程よい反応になるよう、良くチューニングされている。これには、この春からオゾンのバー・ラインナップに加わった38cmバーが効いているだろう。そう、クロノV2のラインナップ中、唯一7.0だけが、38cmバーとのコンプリートなのだ。
地上でカイトを上げ色々試した後にふと気がついた事がある。「風、全然ガスティじゃないじゃん?!」後で確認したら、やっぱりこの時もガスティを感じるコンディションだったらしいのだが、風の強弱をほぼカイトが吸収してしまっているようで、カイトから伝わるパワーフィーリングは実にスムーズかつマイルドなものだった。そのまま、水に入り132cmのツインチップで走り出すと、パワーは充分。一振りでスタートして、そのまま巡航に入る。漫然と走ってフィーリングを掴んでみる。とにかく、素直で安定していて、扱い易いパワーを常に供給してくれる。コンディションに対してはトリマーを数cm引いたあたりがベスト。全部伸ばしてしまうと、失速こそしないけど、要所要所でカイトが前に出ようとするきっかけをつぶしてしまうので、ジャンプかダウンウインドの時にしか使わないレンジという印象。アップ角は漫然と走っている限りは、普通にインフレータブルよりも良いというレベル。たぶん、エッジできっちりアップウインド取った時と同じくらいかな? ん〜なんか物足りないかな? と思って、トリマーを調整しなおして、真剣にアップウインドを意識した動きに入ったら、突然アップ角が明らかに変わって、凄まじい勢いで登り始めた。(あ、やっぱり、これはクロノだ…)と思い、たっぷりと海岸を距離を取ったら、今度はトリマーを全部伸ばしてダウンウインド。これは、V2ならではの安定感と、低速性能で、かなり快適。折から波の高い海面だったので、遊び心が生じ、レオばりのオンショア・ウエーブライディングまがいの動きも試してみるが、これがまたちゃんとついてくる! 正直、先代クロノで波の中でぐりぐりターンなんて、絶対やりたくなかったのだが、V2ではなんのストレスも無く楽しめる。
岸近くまで戻って来て、もう一度アップウインドレグに入ろうと、トリマーを、今度は全部引いてみて驚いた…全然走るのに足らない! レースバーじゃないから大して調整幅は無いはずなのに、さっきまでふんだんに足りていたパワーがスカスカになってしまうのだ。いやこれは強風側に、まだだいぶ余裕がありそうだな、と思いつつトリマーを少し戻してライディング続行。
実は7に対してレース・バーではなくフリーライド・バーを選んだもの、そのあたりが理由で、ハイアスペクトでコード長(翼の前後幅)の短いスモール・サイズの場合、レース・バーの、あのバカ広い調整幅があっても使えなくね? と思ったからだ。案の定、低速側はこれ以上伸ばしても、カイトが失速してしまって、かえって使いずらそう。欲を言うと、高速側(トリマーの引き側)はもう少しレンジが有っても良いかな? という気がするけど、特に本格的にレースをするので無ければ7はフリーライド・バーで充分用が足りそう。
一通り試して、現場に居た仲間にも試してもらった総合的な印象は、クロノV2は普通のカイトボーダーにも楽しめる、ウォーター・リランチャブルのフリーライド・ラムエアーカイトに仕上がっている、というもの。もちろん、取扱に違いはあるし、インフレータブルみたいにバンバン落としても大丈夫! というものでは無いけれど、とりあえず、飛ばしてライディングするのに何か、気をつけなければいけない所があるかというと、そんな事は無い。肩肘張らずに素直にライディングを楽しめるフリーライド・カイトとして仕上がっている。反面、これまでクロノやR1を飛ばす時に感じていた、どこか「今、俺が飛ばしているこいつは、選ばれたものしか使いこなせない超高性能の特別なマシーンなんだぜ!」 的なオラオラ感は全く有りません。そういう感覚に浸りたい方はR1を選ぶか、クロノの中古を探してください。
今回は海面が荒れていたのでツインチップで試したのだが、クロノV2が格段に生きるのは、たぶんハイドロフォイルと組み合わせた時だと思う。今回のテストでも、カイトに対してツインチップボードがついて行けずに足を引っ張っている、というクロノやR1の時に顕著に感じるフィーリングが、うまく抑えられているものの、それでも意識を切り替えてアップウインドを始めると、これまで見せていなかった本当の性能が引き出されるのを体感した。レースボードやハイドロフォイルと組み合わせると、これがもっともっと顕著に現れるのだろうと思うと、次にハイドロフォイルと組み合わせて試すのが楽しみでしょうが無い。あの桁違いの安定感と変わらぬ高性能から想像すると、本当にギリギリ微風でのハイドロフォイルには、本当に安心して使える一枚になりそうなのだ。実際今から、今度はどんな微風の日にクロノV2を試しに海に出ようか? とウインドグルを見ながら風の弱そうな日を探す日々を送っている今日このごろなのである。

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