2015年9月9日水曜日

ISEWANカップ DAY2
二日目の競技の行方を決定した最も大きなファクターは天候であったと言っても過言では無いでしょう。9月6日の気圧配置は停滞前線のちぎれた中部地区の西から、前線上の低気圧が徐々に近づいて来るというもの。昨日から北東よりの風が吹き続けて気温は低く、先行する雲に覆われ日照は無く、サーマルアクティビティは期待出来ない。となると風を吹かせる要素は、前線に沿って発生し通過していく雨雲によるもので、これは、雨とセットで吹いては降り、晴れては止むという不安定な繰り返しになるだろうと僕は予想していました。ところが、会場に到着してしばらくすると、それまでの無風とは一変して7~8mの東風が吹き込んで来た。僕の予測は吹いたり、止んだりを繰り返しながら、雨とセットで強さはせいぜい4~5m止まり。何かの突風で瞬間最大で強めが入る可能性はあるかな? というものだったので、朝いきなりの、この風は全く予想外。「まぁ、偉そうな事言っても外すときゃ外すな…」と思いつつ準備を整え、レスキュー艇に乗り込み、ちょい荒れ気味の港外に乗り出して行くと、港を出た時はひどく大きかったうねりが何か、収まってきている。ありゃりゃ? と思ってあたりを観察すると明らかに風が落ちてきている。あ〜予想が当たったけど、これはありがたく無いなぁと思いつつ西の空を観察すると朝真っ黒だった雲は姿を消し、薄明るい雲に覆われていました。天候についてまとめておくと、この日はこの後も、レースが出来そうなくらい風が上がると雨が来て、通り過ぎるとまた風が落ちてを繰り返し、選手達を翻弄しました。実は風が強いタイミングは吹き始めると約30分程度続き、吹かない時間のインターバルはサイクルが無いという事までは観察して、沖で吹き始めた時点で本部に指示出しすれば、吹いてる30分以内にヒートをこなす事が出来ないだろうか? とも考えていました。ですが、沖で吹き始めたタイミングでスタート時間を指示しても、まだ岸には風が到達していないので、そもそも選手が出艇する事が出来ない。うーむ、これはお手上げ…と思いつつ。成り行きに任せてレースを見守っていました。
もう一つ、この日、ユニークであったファクターは機材の逆転現象でした。最終レーストップを獲得した川上選手が使用していた機材は出場選手中最もビギナー向け設定のスロカ・ハイドロフォイルにカイトはカタリスト! つまり、コンディションによっては、最高性能を誇るラムエアーカイトや競技用ハイドロフォイルも、ただのお荷物になりかねないという教訓を孕んだレースだったのです。
第3レース:逆転の下ごしらえ
長いウェイティングの後に始まった二日目最初のレースは、スタートこそ主要選手が切れたものの、落ちてしまった風とカイトの重量を重くしてしまう雨とで、延々タックを繰り返しても、なかなか選手が上マーカーにたどり着かない、珍しいレース展開になりました。前日までトップを走っていた杉原選手は重量増で失速しやすくなったR1 15を、それでも、なんとか落とさずに走るものの、微風に強いセッティングのスロカとクロノ18を使う川上選手に追いつくことは叶わず、最初の上マーカーを川上選手がトップで周回。そのまま逃げ切るかと思いましたが、どこかで米原選手にかわされたと思しく、このヒートは米原選手がトップ、その後に川上選手、杉原選手と続き、後はレースボードクラスまで含めて、フィニッシュ出来た選手は無しという結果になりました。これほど難しいヒートであるにも関わらず、ツインチップクラスでフィニッシュした佐藤選手は、さすがにお見事。オゾン・チームによるゴール独占を自ら阻むあたり、フライサーファー・チーム監督の意地か、はたまた長年ラムエアー一筋の絶妙なカイト操作のなせる業か? ともあれ、ライバルチームの監督に相応しい活躍でした! 実は今大会、川上選手の優勝を確定させる事になる最初のきっかけがゴールの直後に起こっていました。杉原選手がゴール後に気が緩んだのか、大会本部から離れた本部艇付近のビーチにカイトを落としてしまったのです。沖合でこの様子を見ていた僕は「あ〜、もうR1 15は使えない…」と思いました。軽さが命のラムエアーカイト、水に落ちたくらいでは、扱いが難しくなる程度ですが、濡れた状態のままビーチに落とし、砂がついてしまうと、全くもってただのお荷物になってしまうのです。それでも晴れている日だったら、砂を払い落とし、少しの間飛ばしておけば、表面が乾いて砂が落ちてくれるのですが、中途半端に雨の降るこの日、表面を強い雨が洗い流してくれるでもなく、乾いてくれるでも無い状態では、砂が落ちる事はありません。つまり、この時点で杉原選手は即座にスタンバイさせてあったエッジ13にカイトを切り替えるべきだったのです。
第4レース:ひっくり返った世にも珍しいレース
第4レースのリザルトを見ると、ある事に気がつきます。二位の武田選手だけ自信が無いけど、他の順位がついている選手は全て最初からインフレータブルで戦っているか、インフレータブルにカイトを切り替えた選手達です。川上選手はカタリスト、古田選手はエッジ、赤土選手は機種は判らないけど、インフレータブルに切り替えていました。さらに、トップの川上選手にいたってはボードもビギナー向けセッティングのスロカ・ハイドロフォイル。つまり、通常だったらアドバンテージになるはずの、フォイルカイトがこのヒートではディスアドバンテージになり、通常ならば速度で他のウイングに譲る、ビギナー向けウイングがアドバンテージとなったのです。
ではなぜ、このような逆転が起こったのでしょう? 実はこの日、雨という要素の他に波という要素も勝敗に大きく影響したと思うのです。この日、朝イチの強風からの流れで、このビーチにしては珍しくビーチにはひっきりなしにひざ〜腰くらいの波が押し寄せていました。ハイドロフォイルに乗った事の無い人にはピンと来ないかもしれませんが、弱い風の中、遠浅でオンショア&波が入る中、ハイドロフォイルでスタートするのって、かなり困難なのです。ご存じのとおり、ハイドロフォイルには1m近いマストがあります。通常ならば、腹から胸くらいの深さまであれば、難なくスタート出来るのですが、波があると海面自体が40~50cm上下するわけで、この中、オンショアの風で有効水深まで沖に出ていくのはエキスパートにとっても大変だったと思うのです。その中、ビギナー向けにマストの長さを80cmに抑えてあるスロカは明らかにスタートで有利だったことでしょう。それは前日の練習においてスポッツを借りた時にも体感しました。実際、杉原選手も自らのレポートでスタートに手間取った事で焦りが出たと述回しています。考えてみると、ラインナップが揃えば、状況に応じてマストを80cmと95cm、Fウイングをレース、インターミディエート、ビギナーと組み替えられるスロカって、意外とレース向きじゃないかね? と意外な側面を発見した今レースでもありました。 
一方、カイトについてはやはり雨が逆転を引き起こしました。もともと、ある程度重い翼を強引に飛ばすよう設計してあるインフレータブルは、軽さを前提にデザインされたフォイルカイトに比べて、雨に濡れて重くなってしまった場合でも性能の下げ幅が少ないのです。おまけに仮にビーチに落として砂がついてしまっても、海にわざと落として砂を流すという荒技が使えます。
そのようなコンディションは、第4レース、スタート直後に結果となって現れました。後れを意識してポートスタートした杉原選手は、そのまま南に寄りすぎて、おそらく海岸の障害物からの乱流に叩かれたのでしょう、カイトをたたき落とされてしまうのです。本人は謙遜してタックに失敗と言っていましたが、遠目ながら、あれは明らかに乱流の影響でした。やむをえません。まぁ、あえて、本人の失敗を指摘するとすれば、それは、タックそのものではなく、南東クロスの風の中、障害物に近い南側、奥深くまで入り込んでしまった判断そのものです。明らかにリランチは無理と思われたのでレスキュー艇を走らせたため、レースの展開は判りませんが、結果を見ればだいたいの様相は検討がつくというもの。武田選手を除けば、インフレータブルにカイトを切り替えなかった選手は全クラスを通じて全滅です。
この最終レースでの結果が決定打となって、川上選手の逆転が確定しました。レースって一見地味だけど、個々の選手の思いやタクティクス、コンディションの読みが加わるとさらに奥深く、面白くなっていきます。たとえば勝負に”たられば”は禁物ですが、あえてルールを破って、もう一本レースが出来るコンディションが続いていたとしたらどうでしょう? 当然杉原選手はカイトをエッジに切り替えて臨むでしょう。そして、5本目が成立した時点で、1レースをカット出来るので、杉原選手は完全に落とした第4レースを外す事が出来ます。川上選手も悪いレースを落とす事が出来るので、ほぼ、次のレースで勝った方が優勝をものにするという展開になったはずです。僕が思う本当に強い選手というものは、ここから先の神経をすり減らすつばぜり合いをミス無く最大のパフォーマンスで戦い続けられる選手であり、そういった戦いを通じてこそ、選手互いの信頼と尊敬が築かれていくというものです。まだまだ、参加人数も少ないし、オーガナイザーのご苦労も大変であろうとは思いますが、この面白さ、参加者の熱さが少しでも多くの人に伝わり、多くの参加者に集まってもらえるよう、僕もなるべく時間を見つけてレポートをまとめるよう心がける次第です。

0 件のコメント: