2014年6月10日火曜日

ISEWANカップ・レポート

 2014年6月7~8日とISEWANカップの大会サポートスタッフとして、上マーカー付近という普通の人は見学出来ない特等席で、大会を見守る機会を得たので、そのレポートを通じてレースの奥深さ、面白さをお伝えしようと思います。


カイトを上げ始めた選手を見ながら船へ向かう
当日は東寄りの風が北東からゆっくり南東に振れ、昼ぐらいから4~6mくらいまで上がる予報。主催者は12時からのスタートを想定して準備を進め各ブイを打っていきま す。僕はこの時間ちょっとサボらせてもらって、クロノ18&ハイドロフォイルで微風下コソ練(選手達が見ている前でコソ連も無いもんだが…)。さんざん、 転んでいると風が上がったのを見て取ったか、杉原選手がエッジ13&スウォード(ターロアというブランドのハイドロフォイルボード)でスタート。板を浮か せるまで少し手間取ったものの、板が浮いたらあっという間に沖合のスタート地点までアップウインド。これを見て他の選手達も続々と準備を始め、ビーチは騒 然としてきたので、僕はカイトを降ろして船を出す準備へ。



大会本部&出廷はビーチ上端の海浜公園前
杉原選手がトップで上マーカーへ

 主催者は午後にかけて風が南東に振れるという想定で、ビーチから見た時に少し右(南東)寄りに偏ったコースを設定。レースボードクラスはこれを2周、TTクラスは一周で競います。画像は僕がざっと作ってみたブイの配置図。概念図なので、実際の位置とか距離とかは適当ですよ。左寄りの本部艇と黄色のブイの間がスタートラインになります。選手達は指定された時間にこのラインを風下から風上に向かってカットして画面右側の赤い上マーカーに向かってアップウインドしていきます。さて、風がほぼラインに対して直角に入っている場合、選手は下から上、上から下、どちらからラインをカットするのが有利でしょう? コンディション的に有利不利が無い場合、正解は下から上。なぜかというと、セーリングのルールとしてスタボー(スターボード)優先というのがあるので、正面から行き会った時には、風を進行方向右側から受けている側に風上のラインを取る優先権が与えられるのです。従って今回のレースでも一回の例外を除き、全ての選手が下から上(スタボー・スタート)にスタートしました。「本当はスタートブイをもう少し沖合に設置してコンディション的にはボートスタートを有利にした方が、判断が分かれて面白かったんだけどね。」とは競技委員長の弁。

最初のレースは12時10分にスタート。スタートを切ると同時に一斉に選手達は北東方向にアップウインドしていきます。この後、このヒートをトップで制する杉原選手は実は中盤の位置からスタート。遠目に見ると決して良い位置からのスタートではありませんでした。でも、少し経つとどうも様子が違います。クロノ15で出ている杉原選手と、クロノ18の川上選手の二人は走っている位置こそ、集団のトップでは無いけれど、遠目からも明らかにアップウインドしてくる角度が違うのです。コースレースというのは何も巡航速度を競っているわけじゃありません。上マーカーをいかに速く回るかが勝負なので、アップウインド角がより大きければ、何も集団のトップを走る必要は無いわけです。このヒート、ハイドロフォイルにクロノという最新の性能を誇る組み合わせで出た杉原選手の作戦は、慣れないハイドロフォイルでトラブルを避ける為に集団から離れ、ひたすらノーミスでのフィニッシュを目指すというものだったとか。いや、全くその言葉通り、このヒート、杉原選手はスタート直後からほぼ一人旅。余裕で上マーカーをトップで通過すると、昨年のシリーズ覇者末永選手が猛然と後を追う中、差を広げるばかりで、12時21分に余裕のトップゴール。TTクラストップの谷口選手がゴールラインをカットしたのが12時21分40秒なので、なんとTTクラスが1周するよりも速く、コースを2周してしまった計算です! 川上選手は上マーカーを良い位置で回ったものの、まだ受け取って間もないクロノのダウンウインドのコツが判らず、下りで苦戦。第一ヒートは昨シーズンから不動の上位陣、末永、竹田選手とフィニッシュラインを通過しました。

3位以下は混戦状態で上マーカーを通過

コースレースではヒートが終わると、一定の間隔を置いてすぐに次のヒートが始まります。この日、第二ヒートは12時40分のスタート。たとえばトップゴールした杉原選手は12時21分にゴールして居るので、次のヒートに向けて20分近く、休んだり、調整をしたりコンディションの変化に応じてカイトサイズを変えたりという時間を稼ぐ事が出来ます。逆に遅くなってしまった選手はせっかくゴールにたどり着いても、次のスタートに向けてゴールラインがクローズしてしまっていて、DNF(Don’t Finish)、あるいは次のスタートに間に合わなくてDNS(Don’t Start)なんて不名誉な記号をつけられたりしてしまいます。何か、上級者とうっかりスキーに行ってしまったビギナースキーヤーみたいですよね! 

第二ヒートは、杉原選手がスタートブイを間違えて、フライングを取られ、失格となる大番狂わせ、上マーカー付近で竹田、谷口選手のカイトが接触するというトラブルも有って荒れ模様のヒートに。結果、末永、米原、川上の順でゴールするも、トラブルの裁定で竹田選手に救済得点が与えられて、このヒートは同率3位でフィニッシュ。TTクラスはトラブルで追撃する谷口選手の居ない佐藤選手が余裕のトップゴール。

第三ヒートはスタートにユニークな展開が見られました。上がってきた風にカイトをクロノからエッジ13に替えた杉原選手はあえて、他の選手と全く別れてただ独りポートスタート。これタクティクス的には決して有利ではないのですが、過去2ヒートで自己のタイムに自信を持った杉原選手がスタートの不利を承知で、それでも他の邪魔が一切入らない逆スタートを選択したようです。この判断の妥当さはこの次のヒートで明らかになるわけですが…。結果このヒートも杉原、末永の1,2は変わらず。3位に後藤選手が食い込み、TTクラスは佐藤選手が順当に制して終了。

第四ヒートはスタート直後にトラブル発生。スタートが開いた瞬間、岩井、末永(TTクラス女子)選手のカイトが接触。1分以上、後続の選手がスタートラインを切れない状態が続きました。そして、その中に杉原選手の姿もありました。結果として見れば、このヒートこそ、杉原選手はポートスタートを選ぶべきだったとも言えますが、起こってしまった事はもう覆りません。その間にもスタートを切った選手は逃げ続け、トップ集団は最初の折り返しあたりまで進んでいます。だいたいレースボードクラスはこの日のアップウインド・レグを2回のターンで回っていたので、最初のレグの3分の1近くが進行したところでようやく後続の選手達がスタートを切りました。ちょっと驚いたのはこの後の展開でした。トップグループが猛然と逃げ続け、末永選手が上マーカーをトップで回ったときにテールtoノーズでその後を追っていたのはスタートで遅れたはずの杉原選手だったのです。スタート直後にすぐに向きを変えて得意の一人旅に入ったのはチェックしていたのですが、いつの間にあの差を詰めたのだか??? 結果このヒートも順当に杉原、末永、竹田の1,2,3でフィニッシュ。TTクラスも佐藤選手が押さえて終了しました。

この後、風が一度落ちた為に約1時間のインターバル。こういう時間独り上マーカーの沖で投錨しているレスキュー艇はヒマなんですよねぇ。ボートに入ってしまった水をペットボトルで作ったカップで掻いだしたりしてヒマをつぶしている内に再び風が上がり始め、第5ヒートが3時15分にスタート。ところで写真の海面を見てもらうと判るでしょうが、この日、言うほど風が吹いてはいません。こんな風でもたっぷり競技が出来て、参加者全員が嫌ってほど乗れるレース競技ってやっぱり楽しいなぁ…なんて改めて思う次第。ヒート自体は順当に進行し、レースボードクラスの上位陣は変わらず、TTクラスは谷口選手が佐藤選手を押さえてトップの活躍。

そして、4時近く、15時45分にスタートした第6ヒートはもう、ほぼ終わりかけの風にカイトを落とす者続出の荒れ模様の展開に。末永選手はカイトのトラブルでレスキュー艇にて回収。順位は杉原、竹田、米原選手の1,2,3。TTクラスも佐藤選手がトップでフィニッシュしました。

総合結果は6ヒートの内、1レースをカットして成績の良い5ヒートで競われます。結果は杉原選手が圧倒的な強さを見せつけて、全ヒートトップで優勝。昨シーズンの覇者末永選手はベストを尽くすも二位。フライサーファーへの移籍が決まった竹田選手が三位。チーム広島(カイトデビジョン)の不動の一角、米原選手が4位を押さえて不動の四国広島上位陣は今季も健在。そこに関東から参戦した川上選手が続き、大阪チームの後藤選手が6位に食い込み、今後の活躍を期待させるリザルトとなりました。TTクラスは佐藤選手が安定した実力で優勝。谷口選手が続き、3位の女子、末永選手はなんだかんだ言ってスタートしたヒートは、全てゴールしているのがご立派。このクラスがもっと増えたらもっと面白くなるんですけどね!

機材の面では、ハイドロフォイルの強さが強く印象づけられた一戦でした。乗りこなしたらもう他のボードに一切勝ち目はありません。ましてや、それをクロノと組み合わせたりした日には、ホント1km以上離れたレスキュー艇から登り角の違いが見えるくらいですから… また、まぁ微風よりのコンディションだった事もあってラムエアーカイトのアドバンテージが目立ったのもこれまた事実。クロノの杉原選手、川上選手は言うに及ばず、佐藤選手のスピード3 21m2はやはり風が弱い時には強力です。でもね、実は僕、佐藤選手のこの成績の秘密はどちらかというと、ボードの方にあって、ヒール側センターについてるちっちゃいフィンが効いてるんじゃないかと思うんですよね。あれ、昔のツインチップには良くついていた奴で、ちょっと付けるだけで、ボードが全く流れなくなるんです。で、ボードが流れないという事は実はカイトをパワーアップさせる事にもポジティブな効果があるので、板を滑らす場面の無いレースなんかじゃ二重に効いてくると思うのです。他の選手も何も新しい板を買えなんて言わないから、ドリル引っ張り出して自分の板に穴を開けて適当なちっちゃいフィンを一個増設するぐらいの事はしてみるべきじゃないかと思うのです。(もうやっていた上での結果だったらごめんなさい!)

ともあれ、特等席で眺めた今回のレースは楽しいものだったので、特等席を用意してくださった主催者への御礼方々、簡単な大会レポートをものしてみました。読んでお判りのとおり、コースレースの大会って、エリミネーション形式のフリースタイルと違って、風さえ吹けばレスキュー体制付きで嫌ってほどたっぷり乗れるし、トップクラスの選手と自分のライディングとの差を間近で比較する事が出来て楽しいですよ! 今後ますます多くのライダーが興味を持ってコースレースに参加してきてくれる事を祈りつつ、これを読んだ方が次回、10月11~13日琵琶湖の佐波江で行われる大会、もしくはそれに向けて、8月末、9月末に行われるフリースタイル大会併催のファンレースなどに参加してみてくれたら筆者の何よりの喜びとするところです。

大会結果
レースボードクラス
優勝  杉原 オゾン/ターロア
準優勝 末永 ASV
3   竹田 フライサーファー
4   米原 オゾン
5   川上 オゾン
6   後藤  

TTクラス
佐藤 フライサーファー
谷口 オゾン
末永