2014年8月26日火曜日

点検日誌(クロノ18)




クロノ18の右翼が潰れやすいとのクレームを受けて、昨日フライトチェック〜今朝問題点を発見、修理しました。クロノは構造的にこれまでカイトボーダーや大半のカイトショップのスタッフの皆さんが扱ってきたものとは大分趣の異なるカイトです。というか、18くらいのサイズだとほとんどパラグライダーみたいなもんです。たぶん、調子が悪いと漠然と感じても、どこに問題があるのか、何を直せば良いのかさっぱり判らない事もあるかと思います。そこで、今回の事例の発生から解決までの過程を公開しておくことは、今後新たにクロノユーザーになった方の助けになるかと思い、経過を記録し、ブログにて公開する事としました。興味をお持ちの方はご一読いただき、今後のカイトライフの参考にしていただれけば幸いです。

クロノの右翼が潰れやすいという第一報を聞いた時に最初に思いついたのは内部に侵入した砂の可能性です。クロノのエアインテークはメッシュで閉じられていますが、目の細かい砂や、波に洗われたりすると、水と一緒に砂が内部に侵入してしまうことがあります。侵入した砂は飛んでいる内に次第にチップに集まって、細かいものは自然に外部に排出されますが、場合によっては、カイト内部に留まっている事もあります。そうなると軽さが命のフォイルカイトの場合、てきめんに悪影響が出てその部分が潰れやすくなったり失速しやすくなったりしてしまうので、チップ部トレーリングエッジに設けられたベルクロポケットから砂を取り出す必要があります。しかし、この事例の場合、砂はその原因ではありませんでした。次に考えられるのはサスペンション・ラインの一部に結び目が出来ていたり、何かが引っかかったりして、翼が奇麗に形成出来ていない可能性です。クロノのサスペンションラインは極めて細いので、本当に小さい結び目が出来ていたりすると、判らずに飛ばしてしまうことも、なきにしもあらずです。良く点検してもらいましたが、これも無し。となると、考えられるのはどこかのラインが間違って組まれている可能性か、どこかのラインが伸びてしまって(一部が木や草にひっかかったりして強い負荷がかかったりすると起こり得ます。)バランスが崩れたりという事が考えられます。これを点検するのは、左右のラインバランスを点検するのが有効なチェック法です。まず、ブライダルを揃えて何かしっかりしたものに固定します。続いてカイト側に回り込み、アッパーサーフェス側に立ってラインのカイトへの取り付け点ごとに左右のラインの延長が同じかどうかを全てのラインについてチェックします。でも、実はこれ、オゾンの工場を出荷するときに全数チェックされているので、使用後に起こったバランスの崩れをチェックする場合に有効という事になります。案の定、販売店において、このチェックをしてもらいましたが、やはり原因は見つからないとのことで、結局このカイトは僕の手元に送られてきて、僕自身点検することと相成りました。

まずすべきことは点検よりも先にフライトチェックです。ユーザーが不満を感じている現象が実際に起こるのか、それは本当にカイトの問題なのか、それとも原因が他にあるのかを見極めなければいけません。実際にカイトを上げてみると確かにチップ部分が潰れます。ただし、クロノのチップが潰れやすいのは結構元々。アスペクト比7.0で、この薄翼だから、ランチングや、ちょっとした挙動で潰れるのは、まぁハナから承知の上でのデザインです。で、このカイトの場合、確かに右翼のチップが左に比べて弱い。普通にライディングすると、ついつい無意識に修正して操作してしまうので、普通に扱えるのだけど、わざとカイトと対話しないで、漫然と飛ばしてやると右翼がちょっとした事で潰れようとします。翼に目に見える変形は無し。バーを引いた時のトレーリングエッジの変形には若干左右に差がある。してみると疑わしいのはブレークラインの左右不均衡ですが、左右のターン操作、バーの前後動作を試してみると、左右のブレークラインに効きの差は無い。また、バーを引いてブレークラインが引かれている時には全く問題の症状は起こりません。つまり、この問題はバーが引かれていない状態でのみ起こるという事になるので、疑わしいエリアは右翼チップ部トレーリングエッジよりを支えるライン群、B9~12、C9~12あたりと目星を付けました。でも、この辺りのラインの1本、あるいは数本だけの長さが狂っている場合、明らかに飛んでいるカイトの翼面に皺が出来ます。というかそもそも点検段階ですぐに発見出来るでしょう。という風に問題のある箇所を絞り込んでいくと疑わしい場所がだいたい判ってきました。一番の容疑者はブライダルのスピードシステム。プーリーを使ってバー操作をしたときの挙動を各ラインごとに減速して伝える部分です。ここのラインが狂っていると、B,Cライン全体の挙動に大きく関わってくるので、カイトに一見皺や、変形が見えなくても翼全体の形状が微妙に変形してしまいます。次に疑わしいのがチップに繋がるB12,C12あたりのライン。この2本は一番外側に着いているので、多少本来の設計からずれていても、ひと目見ては翼が変形しません。特にC12あたりが長すぎると、翼端は急に潰れやすくなります。と、ここまで目星をつけたところで、チェック作業は終了。風が吹いているビーチでラインチェックをしても作業がしづらいだけなので、点検そのものは翌日に持ち越して、その日は、ちょうど吹き上がってきた風の下、講習生の指導とライディングを楽しみました。

翌朝、まだ空気が動き出す前に庭にクロノを広げて点検を始めました。まず最初に最も疑わしいブライダルをチェック。細引きを使ってブライダルを一つにまとめてフェンスに固定して、左右のラインの長さ、プーリーの位置を比較します。すると…おやおや、PB1ラインにかかるプーリーの位置が右側の方が僅かに遠いではありませんか。(いきなりビンゴか?)と思い、今度は固定したブライダルを外し、左右のブライダルをばらして、ライン同士を比較してみました。すると案の定、右のPB1ラインが左より3cm長くなっています。3cmというといかにも長いように思えますが、このライン、折り返してプーリーを介し、Cラインで1/2、Bラインで1/4に減速する仕組みになっているため、ブライダルからカイトまでの総延長で発生する誤差は、Bラインで15mm、Cラインでは7.5mmです。正直出荷時点検で気付いて欲しかったとは思いますが、結び目の位置や、ラインを引っ張る時の力加減で、誤差の範囲内として見逃してしまう可能性もなきにしもあらずのレベルです。問題さえ見つかってしまえば修正は簡単。一方のループをばらしてラインを短く作り直して、元通りくみ上げて、左右のアンバランスが解消されているのを確認して作業は終了。本当はテストフライトをしたいところですが、秋雨前線がかかってしまった関東は数日天候不順の為、テストフライトは販売店にお願いしてカイトを送り返し、一連の経過をオゾンに報告して終了。オゾンではたぶん、今回のシリアルナンバーと同じロットの他の製品に問題が無いかをチェックして、必要があればテクニカルノートを配布することになるでしょう。

という風に、クロノはこれまで慣れ親しんだインフレータブルカイトとは異なる、結構デリケートなバランスの上に成り立っている製品です。(正直、実はインフレータブルだって決してデリケートで無いわけじゃありませんが、バランスが崩れても構造上修正のしようが無いというのが正直なところ…)何かおかしいかな? とか、どうも左右のバランスが取れていない? とか感じたら落ち着いて頭上に上げたカイトを良く観察してみて、必要な場合は僕がしたような手順で問題点をさぐってみてください。問題がある場合に、割と見える形でそれが発見出来て、簡単に修正できるのはむしろフォイルカイトの利点でもあるんですよ。

2014年6月10日火曜日

ISEWANカップ・レポート

 2014年6月7~8日とISEWANカップの大会サポートスタッフとして、上マーカー付近という普通の人は見学出来ない特等席で、大会を見守る機会を得たので、そのレポートを通じてレースの奥深さ、面白さをお伝えしようと思います。


カイトを上げ始めた選手を見ながら船へ向かう
当日は東寄りの風が北東からゆっくり南東に振れ、昼ぐらいから4~6mくらいまで上がる予報。主催者は12時からのスタートを想定して準備を進め各ブイを打っていきま す。僕はこの時間ちょっとサボらせてもらって、クロノ18&ハイドロフォイルで微風下コソ練(選手達が見ている前でコソ連も無いもんだが…)。さんざん、 転んでいると風が上がったのを見て取ったか、杉原選手がエッジ13&スウォード(ターロアというブランドのハイドロフォイルボード)でスタート。板を浮か せるまで少し手間取ったものの、板が浮いたらあっという間に沖合のスタート地点までアップウインド。これを見て他の選手達も続々と準備を始め、ビーチは騒 然としてきたので、僕はカイトを降ろして船を出す準備へ。



大会本部&出廷はビーチ上端の海浜公園前
杉原選手がトップで上マーカーへ

 主催者は午後にかけて風が南東に振れるという想定で、ビーチから見た時に少し右(南東)寄りに偏ったコースを設定。レースボードクラスはこれを2周、TTクラスは一周で競います。画像は僕がざっと作ってみたブイの配置図。概念図なので、実際の位置とか距離とかは適当ですよ。左寄りの本部艇と黄色のブイの間がスタートラインになります。選手達は指定された時間にこのラインを風下から風上に向かってカットして画面右側の赤い上マーカーに向かってアップウインドしていきます。さて、風がほぼラインに対して直角に入っている場合、選手は下から上、上から下、どちらからラインをカットするのが有利でしょう? コンディション的に有利不利が無い場合、正解は下から上。なぜかというと、セーリングのルールとしてスタボー(スターボード)優先というのがあるので、正面から行き会った時には、風を進行方向右側から受けている側に風上のラインを取る優先権が与えられるのです。従って今回のレースでも一回の例外を除き、全ての選手が下から上(スタボー・スタート)にスタートしました。「本当はスタートブイをもう少し沖合に設置してコンディション的にはボートスタートを有利にした方が、判断が分かれて面白かったんだけどね。」とは競技委員長の弁。

最初のレースは12時10分にスタート。スタートを切ると同時に一斉に選手達は北東方向にアップウインドしていきます。この後、このヒートをトップで制する杉原選手は実は中盤の位置からスタート。遠目に見ると決して良い位置からのスタートではありませんでした。でも、少し経つとどうも様子が違います。クロノ15で出ている杉原選手と、クロノ18の川上選手の二人は走っている位置こそ、集団のトップでは無いけれど、遠目からも明らかにアップウインドしてくる角度が違うのです。コースレースというのは何も巡航速度を競っているわけじゃありません。上マーカーをいかに速く回るかが勝負なので、アップウインド角がより大きければ、何も集団のトップを走る必要は無いわけです。このヒート、ハイドロフォイルにクロノという最新の性能を誇る組み合わせで出た杉原選手の作戦は、慣れないハイドロフォイルでトラブルを避ける為に集団から離れ、ひたすらノーミスでのフィニッシュを目指すというものだったとか。いや、全くその言葉通り、このヒート、杉原選手はスタート直後からほぼ一人旅。余裕で上マーカーをトップで通過すると、昨年のシリーズ覇者末永選手が猛然と後を追う中、差を広げるばかりで、12時21分に余裕のトップゴール。TTクラストップの谷口選手がゴールラインをカットしたのが12時21分40秒なので、なんとTTクラスが1周するよりも速く、コースを2周してしまった計算です! 川上選手は上マーカーを良い位置で回ったものの、まだ受け取って間もないクロノのダウンウインドのコツが判らず、下りで苦戦。第一ヒートは昨シーズンから不動の上位陣、末永、竹田選手とフィニッシュラインを通過しました。

3位以下は混戦状態で上マーカーを通過

コースレースではヒートが終わると、一定の間隔を置いてすぐに次のヒートが始まります。この日、第二ヒートは12時40分のスタート。たとえばトップゴールした杉原選手は12時21分にゴールして居るので、次のヒートに向けて20分近く、休んだり、調整をしたりコンディションの変化に応じてカイトサイズを変えたりという時間を稼ぐ事が出来ます。逆に遅くなってしまった選手はせっかくゴールにたどり着いても、次のスタートに向けてゴールラインがクローズしてしまっていて、DNF(Don’t Finish)、あるいは次のスタートに間に合わなくてDNS(Don’t Start)なんて不名誉な記号をつけられたりしてしまいます。何か、上級者とうっかりスキーに行ってしまったビギナースキーヤーみたいですよね! 

第二ヒートは、杉原選手がスタートブイを間違えて、フライングを取られ、失格となる大番狂わせ、上マーカー付近で竹田、谷口選手のカイトが接触するというトラブルも有って荒れ模様のヒートに。結果、末永、米原、川上の順でゴールするも、トラブルの裁定で竹田選手に救済得点が与えられて、このヒートは同率3位でフィニッシュ。TTクラスはトラブルで追撃する谷口選手の居ない佐藤選手が余裕のトップゴール。

第三ヒートはスタートにユニークな展開が見られました。上がってきた風にカイトをクロノからエッジ13に替えた杉原選手はあえて、他の選手と全く別れてただ独りポートスタート。これタクティクス的には決して有利ではないのですが、過去2ヒートで自己のタイムに自信を持った杉原選手がスタートの不利を承知で、それでも他の邪魔が一切入らない逆スタートを選択したようです。この判断の妥当さはこの次のヒートで明らかになるわけですが…。結果このヒートも杉原、末永の1,2は変わらず。3位に後藤選手が食い込み、TTクラスは佐藤選手が順当に制して終了。

第四ヒートはスタート直後にトラブル発生。スタートが開いた瞬間、岩井、末永(TTクラス女子)選手のカイトが接触。1分以上、後続の選手がスタートラインを切れない状態が続きました。そして、その中に杉原選手の姿もありました。結果として見れば、このヒートこそ、杉原選手はポートスタートを選ぶべきだったとも言えますが、起こってしまった事はもう覆りません。その間にもスタートを切った選手は逃げ続け、トップ集団は最初の折り返しあたりまで進んでいます。だいたいレースボードクラスはこの日のアップウインド・レグを2回のターンで回っていたので、最初のレグの3分の1近くが進行したところでようやく後続の選手達がスタートを切りました。ちょっと驚いたのはこの後の展開でした。トップグループが猛然と逃げ続け、末永選手が上マーカーをトップで回ったときにテールtoノーズでその後を追っていたのはスタートで遅れたはずの杉原選手だったのです。スタート直後にすぐに向きを変えて得意の一人旅に入ったのはチェックしていたのですが、いつの間にあの差を詰めたのだか??? 結果このヒートも順当に杉原、末永、竹田の1,2,3でフィニッシュ。TTクラスも佐藤選手が押さえて終了しました。

この後、風が一度落ちた為に約1時間のインターバル。こういう時間独り上マーカーの沖で投錨しているレスキュー艇はヒマなんですよねぇ。ボートに入ってしまった水をペットボトルで作ったカップで掻いだしたりしてヒマをつぶしている内に再び風が上がり始め、第5ヒートが3時15分にスタート。ところで写真の海面を見てもらうと判るでしょうが、この日、言うほど風が吹いてはいません。こんな風でもたっぷり競技が出来て、参加者全員が嫌ってほど乗れるレース競技ってやっぱり楽しいなぁ…なんて改めて思う次第。ヒート自体は順当に進行し、レースボードクラスの上位陣は変わらず、TTクラスは谷口選手が佐藤選手を押さえてトップの活躍。

そして、4時近く、15時45分にスタートした第6ヒートはもう、ほぼ終わりかけの風にカイトを落とす者続出の荒れ模様の展開に。末永選手はカイトのトラブルでレスキュー艇にて回収。順位は杉原、竹田、米原選手の1,2,3。TTクラスも佐藤選手がトップでフィニッシュしました。

総合結果は6ヒートの内、1レースをカットして成績の良い5ヒートで競われます。結果は杉原選手が圧倒的な強さを見せつけて、全ヒートトップで優勝。昨シーズンの覇者末永選手はベストを尽くすも二位。フライサーファーへの移籍が決まった竹田選手が三位。チーム広島(カイトデビジョン)の不動の一角、米原選手が4位を押さえて不動の四国広島上位陣は今季も健在。そこに関東から参戦した川上選手が続き、大阪チームの後藤選手が6位に食い込み、今後の活躍を期待させるリザルトとなりました。TTクラスは佐藤選手が安定した実力で優勝。谷口選手が続き、3位の女子、末永選手はなんだかんだ言ってスタートしたヒートは、全てゴールしているのがご立派。このクラスがもっと増えたらもっと面白くなるんですけどね!

機材の面では、ハイドロフォイルの強さが強く印象づけられた一戦でした。乗りこなしたらもう他のボードに一切勝ち目はありません。ましてや、それをクロノと組み合わせたりした日には、ホント1km以上離れたレスキュー艇から登り角の違いが見えるくらいですから… また、まぁ微風よりのコンディションだった事もあってラムエアーカイトのアドバンテージが目立ったのもこれまた事実。クロノの杉原選手、川上選手は言うに及ばず、佐藤選手のスピード3 21m2はやはり風が弱い時には強力です。でもね、実は僕、佐藤選手のこの成績の秘密はどちらかというと、ボードの方にあって、ヒール側センターについてるちっちゃいフィンが効いてるんじゃないかと思うんですよね。あれ、昔のツインチップには良くついていた奴で、ちょっと付けるだけで、ボードが全く流れなくなるんです。で、ボードが流れないという事は実はカイトをパワーアップさせる事にもポジティブな効果があるので、板を滑らす場面の無いレースなんかじゃ二重に効いてくると思うのです。他の選手も何も新しい板を買えなんて言わないから、ドリル引っ張り出して自分の板に穴を開けて適当なちっちゃいフィンを一個増設するぐらいの事はしてみるべきじゃないかと思うのです。(もうやっていた上での結果だったらごめんなさい!)

ともあれ、特等席で眺めた今回のレースは楽しいものだったので、特等席を用意してくださった主催者への御礼方々、簡単な大会レポートをものしてみました。読んでお判りのとおり、コースレースの大会って、エリミネーション形式のフリースタイルと違って、風さえ吹けばレスキュー体制付きで嫌ってほどたっぷり乗れるし、トップクラスの選手と自分のライディングとの差を間近で比較する事が出来て楽しいですよ! 今後ますます多くのライダーが興味を持ってコースレースに参加してきてくれる事を祈りつつ、これを読んだ方が次回、10月11~13日琵琶湖の佐波江で行われる大会、もしくはそれに向けて、8月末、9月末に行われるフリースタイル大会併催のファンレースなどに参加してみてくれたら筆者の何よりの喜びとするところです。

大会結果
レースボードクラス
優勝  杉原 オゾン/ターロア
準優勝 末永 ASV
3   竹田 フライサーファー
4   米原 オゾン
5   川上 オゾン
6   後藤  

TTクラス
佐藤 フライサーファー
谷口 オゾン
末永




2014年5月26日月曜日

エッジ2014インプレのつづき

2013 19.0で出ている間に、中だるみで風が落ちたのか、明らかにカイトのパワーが落ち、動きも遅くなった。実は内心「お! これは微風限界を試す良いチャンス!」と思い、急いでビーチに戻って今度は2014をあげてみる。あれ? 確かに風は落ちてるけど、でもまだ走れないほどじゃない。試しにスタートしてみるとちゃんと走れる。微風限界ぎりぎりでのエッジの挙動はこれまたクロノに非常によく似ている。振り下ろした時のパワーはそれほどでもないのに、そのカイトを戻して頭上に戻る時にグゥ~とパワーを発揮してくれるのだ。これを利用してボード上に留まり、二度目を力一杯振り下ろすと、進行風とあいまって一気にボードとカイトが走り始める。(こういう時は最大パワーを求めてフロントラインのトリマーをいっぱいまで伸ばすのでは無くて、カイト自身が走りやすいように5~10cmくらい引いてやると、かえって調子が良いって皆さんご存じでした?) 走り始めれば後はしめたもので、速度が乗れば乗るほど、エッジは快適にパワーを発揮してくれる。ハッと気付けば2013、19.0では少なくともアップウインドは到底無理だった風で普通にプレーニングしてアップウインドしている! もちろん飛べば大ジャンプとまではいかないが、普通に宙に浮くことに不自由は無い。もともとリフトが強いので、ポップも綺麗に決まり、大きなカイトにありがちな小技が出来ない不快感もまるで無い。やがて、再び風が上がってきて、ときおりブローでオーバー感を感じるようになってきた。すこし、強めのブローが入り、エッジを立てておくのが少ししんどくなった時にフロントライントリマーを2/3くらい引いてみた。するとどうだろう。パワーは一気に落ちて、エッジに力をこめる必要は一切無くなった。トリマーの調整にカイトは実に素直にそのパワーを増減する。こういう特性を見ると、19にはやはりフロントラインの調整幅の大きいレース・バーの方が相性が良いだろうと実感。そのまま、風が上がるのに合わせて13.0、9.0と試したかったのだけど、この後、入荷したエッジを各所に出荷しなければいけないので、テストはここまでで終了して帰宅。実はこの日は金曜日。出荷して土曜にお店に届くのと、土曜に出荷して日曜に届くのとではカスタマーやオーナーの喜びには大きな違いがありますからね!

翌日、ゼファーしか走っていない(それも下りながら…)風ながらはじめから13.0をセッティング。さすがに13.0の動きは軽快! 50cmバーでもダイレクト、かつスムーズにキュンキュン動く。試しにブルノッティ・ジェイド(オニキスに相当するレディスモデル)でスタートしてみると、いや確かにアンダーながら走れるし、アップウインドできる。実はこれ、伝統的なエッジ独特の特性で、ノーマルバーとのセッティングではほぼ”プレーニング出来ればアップウインド出来る、アップウインド出来ればジャンプ出来る”という性格を持っています(注:レースバーの場合、ダウンウインド・レグの為に走るけどアップウインドしない=ダウンウインドに都合の良い、レンジが設定されています。)。その伝統はさらに磨きをかけられており、13でありながら一緒に走っているゼファーより、むしろ調子が良いくらい。試しにカイトを貸してもらってゼファーで乗ってみたところ、確かにゼファーの方がパワーはあるのだけど、どうしても振り下ろしたカイトを戻して二度目を振り下ろすというサイクルがエッジ13よりも時間がかかってしまうので、うまくピークパワーを繋いでボードをスピードアップさせられないという感じでした。いったん進行風がかかってしまうと、そのディーゼルエンジンを思わせる安定したパワー感はピカイチなのだけど、いくら動きが良くなったゼファーとは言え、さすがに13.0には動きの速さで叶わないといった所でした。やがて次第に風が上がり、エッジ13ジャストになってくると、その楽しさはまた別次元、ありあまる滞空時間は自由にコントロール出来るし、それぞれの挙動のつながりのスムーズさはオゾンのラインナップ注でもピカイチ。クロノ18に驚かされた後に、15の楽しさに我を忘れさせられたのとそっくり同じ構図が19と13で体感されました。

エッジの今回もモデルチェンジは乗った人が全て口を揃えるとおり、乗り味そのものがごっそりと変わったフルモデル・チェンジと言って良いだろうと思います。変わったといっても、前の方が良かったという声はほぼ無いのでご安心を。僕も体感していますが微風域から強風域までどこでもスムーズ、快適に、同じような乗り味で楽しめます。実はエッジ2014はオゾンが新しく開発したソフトウイング用のCADソフトでデザインした最初のインフレータブルカイト(最初の”カイト”はクロノね)。この新しいソフトは、カイトが迎角を替えた時に起きるソフトウイング特有の変形まで考慮して計算出来るのが特徴で、このおかげでトリムを変えた時でもスムーズにパワーや操作性が変化するようにデザイン出来たようです。それでは、エッジは2013年モデルに比べてどういう方向に変わったのか? 僕は、これ、クロノに合わせてチューニングしたのだと思います。それくらい、エッジ2014はクロノに似ています。振り上げた時に発揮される大きなパワー、低速から発揮される太い進行風、安定した力強いリフト、これらはクロノ特有の特徴です。2013エッジは素晴らしいカイトでしたが、実はクロノから乗り換えると、特性が違うので少しそこでギャップを感じさせられましたが、レース目的で使うユーザーにはそれはちょっと具合が悪い。そこで、微風のクロノから強風ガスティのエッジまでシームレスに使える、クロノ由来の特性(たぶんプロファイル)を与えられたインフレータブル、それがエッジ2014なのだろう、というのが僕の結論です。ところで、冒頭、前の方が良かったという声の後に”ほぼ”がついている事が気になっている人がもしかしたら居るかな? 最後にそのあたりを詳しく解説しておきましょう。それぞれのサイズでサイズレンジに対して弱い風の中で飛ばした時、エッジオブザウインドで静止させたカイトを動かそうとすると、エッジ2014は2013よりも反応が悪かったり、場合によっては失速しそうな兆候を示す事があります。唯一この一点だけは2013の方が使いやすいなと思わせる部分です。全てにおいてグレードアップした2014エッジが唯一トレードオフに出したのはこの特性だったのでしょう。

2014微風カイト考:
さて、エッジ13がゼファーに匹敵した日にゃぁ、ユーザーは微風カイトに何を選べば良いの?! なんて声がどこからか聞こえてきそうなんで僕からのアドバイス。まず、絶対性能を追求するならクロノ。エッジ19を引っ張り出そうがどでかいボードに乗ろうがこれは揺るぎません。一番弱い風から鼻歌交じりで走り始めます。収納寸法も信じられないくらい小さいし、空気を入れなくてもいいのは本当に楽。でも扱いはしっかり学んでもらわなければいけないし、波の激しい海面だとか、ガスティ・シフティな風は正直苦手。それからビギナーには絶対向きません! エッジは13以上を微風用として使えると考えてもらって結構かと思います。パワー的には15がゼファーと同等くらいかな。13でゼファーと同等〜それ以上の性能を引き出すには(引き出せます!)乗り手のスキルもちょっと要求されます。従って、大柄でなくて、絶対的な微風域を追求せず、どちらかというとカイトの動きを重視する中級者以上のライダーはエッジ13がお勧め、価格もこのサイズだったらゼファーと同等です。後は体重や、狙っている微風限界に応じて15、17、19と選んでもらえば良いでしょう。ただし、ハイアスペクトの形状はウォーターリランチに際して、難しさを感じる場面もあるだろうから、カイトを落とすのがデフォルトのビギナーにはゼファーの方が良いでしょう。ゼファーは伝統的に認められたそのビギナーフレンドリーな特性がピカイチ。先代から引き続き、どれだけのビギナー達に、風波の立たないフラットな海面で練習する機会を提供して、ライディングの楽しさ、スキルアップの喜びを提供してきたかしれません。また、際限無いと勘違いされそうな強風側の風域の広さも大きな魅力。あらゆる場面で安定した性能を発揮する微風用のフリースタイル、フリーライドカイトの定番はやはりゼファーと結論して良いかと思います。

2014年5月20日火曜日

エッジ2014 インプレッション&微風カイト考


エッジの2014年モデルが発売開始されて、これでオゾンの2014ラインナップが全て出そろった。先日ようやく新しいエッジの19.0と13.0を使う事が出来たので簡単なインプレッションと、クロノが加わったこの夏の微風用カイトへの考え方をまとめておこうと思う。

2014エッジはグラフィックこそ変わったものの、一見従来モデルに比べて大きな変更が有ったようには見えない。実際開発サイドの説明でも様々なプロトタイプを試したが結局、従来モデルによく似た形に落ち着いたと語っている。それだけ、従来のエッジの形が洗練されていた事の証左であろうと考える。ところで、あまり知られていないであろうエッジにまつわるトリビアを一つ披露しておこう。実はエッジのブラダーセットは2011年モデルから2013年モデルまで全て共通。つまり、リーディングエッジの長さ、ストラットの位置などの基本配置は全く変わっていないのだ。さらに、2010から2011にかけての変更は逆止弁付きのバルブからボストンバルブへの変更だけなので、基本設計は2010年から4年間変わる事無く、激しい競技の世界で常に他社をリードし続けて来たという事になる。カイトという道具に付き合い初めてもう10年を越えるが他にこんな化け物じみたカイトの話は聞いた事が無い。では、4年ぶりのメジャーアップデートを経た新しいエッジの乗り味は変わったのだろうか? 早速実際に飛ばしてみた感想を書いていこう。

エッジ2014には新たにテイジンのダブルリップストップ素材、テクノフォースD2が採用されている。その為か、従来オゾンのラインナップにあまり見なかった、パープルカラーが加わり、見た目の印象もだいぶ従来モデルから異なるプリント中心のグラフィックになっている。左右非対称のグラフィックは多いに目を引くが、プリントの為、カイトを上げている本人目線からは結構のっぺりした印象になる。この点は生地を切り返してグラフィックにしていた従来路線の方が目を楽しませてくれた。おそらく、この変更は耐久性の向上と、僅かな縫い目すらカイトの上面に残さないための方策であろうと推測する。翼の上面では数mmの突起で翼に有害な乱流が出来てしまう。同じくひたすら性能を追求して作られた「クロノ」やバギー用レースカイト「クァンタム」にもカイトのコード方向を途中で断つグラフィックの為の切り返しが一切無い事でオゾンの開発陣の考えている事が見て取れる。

不安定な4~6mの夏を思わせる軽めの風で19を上げてみた。ランチングしてみると微風であるにも関わらずトルクフルなパワーを感じさせる。頭上に上げるとクロノを思わせるリフトがぐっと加わり、この時点でリフトの強いカイトである事を印象づける。あいにく、55cmバーが手元になく、50cmのコンタクトバーで飛ばしているのだが、この組み合わせだとさすがに反応は機敏とは言えない。ただし、操作に対する反応のズレや遅れのようなものは無いので、おかしな動きに悩まされる事は無い。ユーリ・ズーン・プロ132x40で走りだすと、もちろんなんの不自由も無く快適に走り出す。走り出して、あれ? と思った。風向きこんなだったっけ? 沖でリターンした瞬間気が付いた。普段はカタリストやレオに乗る事が多く、その感覚でイメージしていた風向きから想定されるラインよりもぐっと風上に向かって走っていった事で、風向きの認識に混乱が生じたのだ。もう一つ感じた印象は進行風のかかりの早さとトルク感の強さ。風下に引っ張られる感じとは違うのだが、パワーに有無を言わさぬ力強さを感じる。ちょいと飛んでみると滞空時間が異常に長い。もともと、エッジは滞空時間の長いカイトなのだが、それにもまして空中に居る時間が長い、この感じは…と思い返して、ここまで感じてきた全ての特性がよく似たあるカイトが頭に浮かんだ。「クロノ」である。安定したフラットなパワー、進行風のかかりの良さ、トルク感、異常なアップ角(ダウン角もね)と滞空時間。つまり、エッジ2014はクロノによく似た特性に仕上げられているのだ。

ここで、比較の為に2013エッジ19をあげてみた。瞬間、軽い衝撃に襲われた。「スカスカじゃん…」風速計の読み出しでピーク6mを告げていた風は、実は極めて不安定な軽い風で、平塚では8月に良く見られる、”沖に白波が見えるし、風はあきらかに感じられるけど、なぜかカイトがパワーを全然発揮してくれない超軽い風”だったのだ。実際に同じボードで走ってみると、なんとかだましだまし、出た所まで戻ってこられるけれども、2014エッジに比べると明らかにパワー不足で、その差はまるまるワンサイズ分くらいの違いが感じられたのだった。

つづく

2014年3月12日水曜日

「クロノ」
 正直な所を言うと、水上で使えるウォーター・リランチャブルのラムエアーカイトというカテゴリーはいずれ、姿を消す運命にあるのだと思っていた。かつておつき合いしていた「アドバンス」のラムエアーカイト。なんとか皆に使ってもらおうとあれやこれやとプロモーションに努めたものの、時間を費やせば費やすほど、激しい競争の中でインフレータブルのデザインは磨き上げられていき、ラムエアーは苦境と偏見の中、方向性を見失い、全く使えない安物から、とんでも無い高価だが無意味な製品が混在する、混沌のマーケットへと落ち込んでいった。
 そんな時代、ラムエアーの存在価値をスノーカイトに絞り、水上での使用をあえて考えない事で、扱いやすさと安全性、高性能を実現した画期的なカイト「フレンジー」を開発したのがオゾンだった。そんなオゾンが、決して、その優れた開発能力をもって海用のカイトを作ろうとはしない事自体が、ラムエアーの海上における活躍に見込みが薄い事をを示していた。
しかし、時代は変わったようだ。コースレースというカテゴリーの登場である。ラムエアーの特徴である進行風のかかりの良さ、高速性能、軽さによる優れた微風性能が、微風時のコースレースに圧倒的なアドバンテージを見せるようになってきたのだ。もちろん、ハイドロフォイルの興隆も無関係では無いだろう。同時にオゾンがパラグライダーの分野で培った、高速のウイングをデザインする新しいノウハウが、カイトにフィードバックされるようになった事も、今日この日、クロノがウォーターリランチャブルのラムエアーカイトとして市場に登場する大きな要因だったのであろうと思われる。ともあれ、今季から、微風でも乗りたいカイトボーダーに新たな選択肢が提示される事となった事は間違い無い。

テスト
2014年3月11日、微風限界ぎりぎりを見極めるべく風の弱いのを狙って18.0のテストにビーチパークを訪れた。バッグから取り出したカイトを、砂浜に広げると実に細長い。リーディングエッジにはバテンが埋め込まれていて、地面に広げた時点で形が出来ている。ブライダルはピアノ線か?! と思うくらい極細で、慣れない人にはラインチェックが大変そうだ。この辺りは「いや、これ何も万人に乗ってもらおうと思って作った物じゃ無いから。」てな感じの作り手の割り切りが感じられる。コントロール・バーはランディングやバックリランチ用のブレークハンドルが付いている以外はマリン用のバーと同じ構成。実は通常のマリン用バーでも飛ばせる。

ランチング
この手のウォーターリランチャブルカイトは空気の入りがあまり良くないので、カイトを上げる前に少し空気を入れてやるプレ・インフレートという作業をするのが相場だ。しかし、ビデオを見ているとどうもそんな事をしないですんなり上げているように見えたので、今回は新品を広げたら、そのまま何もしないであげてみることにした。チキンループをフックして数歩後ずさりしてみると、意外なほどすんなりとカイトは風をはらみ離陸しようとする。そのままガイダンスビデオにあるとおり、バーを少し引いて少しプレッシャーを与えてやると、実にあっけなく空気を取り入れてしまった。もちろん一度もポンピングや、フロントラインを引っ張るなどの操作はは必要無かった。

空中での挙動
風は2〜3.5mくらいで不安定なのだが頭上に上がったカイトは実に安定している。バックストールの気配は操作している時も含め全然無い。リフトは非常に強く、こんな条件でもブローが入ると一瞬足が地面を離れたりする。ガイダンスビデオではカイトを頭上に置いておかないように、と指示されているが、確かに頭上に置いて安閑としていると危なそう。風が息をついてもバックストールをする気配も無く、むしろ限界を割って風が落ちた場合は(全く無風ってこと)そのままくずおれるように頭上から落ちてくる。
操作に対する反応は良い。操作から遅れる事無く動き出す…が、その後の動きはサイズ相応に決して早くは無い。後述するが微風でパワーを引き出す時に思い切り振り下ろした時などは早めの操作が必要だ。また、カイトを操作した時のパワーのかかり方の癖がインフレータブルとは少し違う印象がある。カイトを一気に振り下ろしてもそれほど大きなパワーの変化を感じず、むしろ振り戻したカイトが頭上に近づく頃に図太いパワーを感じる。

ライディング
この風で乗る事はほとんど期待していなかったのだが、どうもいけそうな感触なので水に入ってみた。ボードはリップタイド135x41。振り下ろした瞬間のパワーは充分にあるのでボードの上には問題無く立てる。かつて盛んに作られた旧時代の微風用カイトは、ここからカイトを振り上げる時にカイトが半ば失速した状態でパワーの空白状態を作ってしまうために結局ボードを走らせ続ける事が出来なかったのだが、クロノはこの状態でも失速しないでパワーを発揮して、あまつさえ再び頭上に戻る所で大きなパワーを発揮してくれるので、こんな風だというのにボードが止まってしまうことが無い。そのまま二振り目を振り下ろすと、ボードは一気に加速して進行風が加わったクロノは活き活きと走り始める。今回組み合わせているレース・バーではトリマーを20cmくらい引いた位置でカイトが気持ち良く走ってくれるようだ。そのまま速度を上げていくと、カイトを振らなくても安定した巡航に入った。「はは! 普通に走ってやがる、これ!」思わず口をついてこんなセリフが飛び出した。走っている最中に時折少し強めのブロー(といっても4mくらいだろうけど…)が入る事がある。この瞬間ぐっとパワーアップして「あれ? こんな風でオーバー?」と感じられるのだが、少しバーを押し出すと、それまで感じていたパワーが全てすっと前進速度変わって加速していく快感は、クロノ独自のものだろう。これ、実に気持ちが良い。今回のテストはツインチップを使ったが、感触としてはボードがカイトの性能の足を引っ張っている印象。これがレースボードやフォイルだったら、さらに微風が楽しそうだ。

トリック
有り余るリフトはトリックを実にのんびりと楽しくさせてくれる。こんな微風のエアトランジションだって、いつもの倍くらいゆっくり、高く進行する。たぶんバックロールなんかやったら回りすぎちゃってかえって失敗しそう。安定して長時間続くリフトのおかげで、レースボードやフォイルのタックは実にやりやすいとの事。ネガティブな面としてはカイトがやたら速いので、この微風環境だとターンの時などカイトを振り下ろす位置とボードを走らせる方向を上手にコーディネートしてあげないと、エッジまで振り切ってしまう。もっとも、他のカイトではそうそうこんな風で乗ることは無いので、比較で語る事は出来ないのだが…。まぁ、このカイトで楽しいのはオールドスクールのビッグエアーとか、滞空時間を活かしたトリックなど。波乗りははっきりオゾンのホームページに”出来ない”って書いてあるし、ウエイク・トリックなんて全然やる気にならない。

リランチ
ラムエアーカイトとインフレータブルの一番大きな違いはリランチの操作。片側のバックラインを引くインフレータブルに対してラムエアーは両側のバックラインを引いて完全にバックリランチさせてからランチングさせる。クロノの場合、そのために用意されたブレークハンドルの中央からややずれた位置を持って引き込んでやるとカイトがバックリランチしながらどちらか一方を向くので、リーディングエッジが上を向いたらブレークハンドルを離して離陸させてやる。注意して欲しい事は、リーディングエッジにバテンが入っているので、逆さまに地面に落ちている状態でカイトを動かすと、リーディングエッジを傷めてしまうこと。変にバックラインを片側引いたりしないで速やかにブレークハンドルに手を伸ばす習慣を身につけて欲しい。

ランディング
ランディングは通常のカイトと同じでエッジまでおろして仲間にキャッチしてもらうのだが、相手がキャッチしてくれたら速やかにカイト方向に歩いてカイトからテンションを抜いてあげるのが良いだろう。今回のテストでは独りだったのでセルフランディングを試してみた。まずブレークハンドルを用いたランディングだが、降ろすこと自体は問題無い。ただ、降ろした後にカイトをキャッチに行く事が少々問題だ。降ろしてもカイトからはすぐに空気が抜けないので、ラインを緩めればすぐにカイトが転がってしまう。実はカイトパッケージにグラウンドに突き刺せる杭が同梱されているので、これを予めランディングしそうな位置に用意しておくと、これにブレークハンドルをひっかけてカイトをキャッチしにいく事が出来る。これを用意するのを忘れてしまった場合は、セーフティーを働かせてカイトを落とし、1本残ったフロントラインをたぐってカイトに近づくと良い。ミドルアスペクトのラムエアーカイトでフロントラインの片方を残すとカイトが回ってしまって収拾が付かないのだが、ここまでハイアスペクトになると問題無く地面に落ち着いていてくれる。

良い点:
微風最強。絶対的な高速性能、サイズの割には素直でダイレクトな反応。ポンプを持ち歩く必要が無く、セッティングもあっという間。車内のスペースもあまり取らない。とにかく翼として美しい!

イマイチな点:
ラインテンションが緩んだ時の粘りはインフレータブルには叶わない。従って、シフティ、ガスティな風への耐性はインフレータブルに譲る。カイトをラフに扱ってボードに集中したい波乗りやニュースクールトリックには向かない。細いブライダルは慣れない人にはチェックが大変。

こんな人に:
レースやフォイルボードに興味があって、夏や風の弱い日の穏やかなフラット海面でスピード感や浮遊感を楽しみつつライディングしたい人、速度命でかっ飛ばしたい人、でかい微風用カイトに空気入れるのが嫌な人、翼にこだわったり、風と対話しながらエネルギーを引き出す事に喜びを感じる人、そんな人にクロノは思い切りお勧めです。ええ、そりゃもう明確な特性付けと個性バリバリのカイトです。万人向けだったりビギナー向けだったりなんて口が裂けても言うものですか(笑)。
地上では斜めの位置に置いておいた方が無難

戻しの操作が遅れてちょっとチップが接水。



ランチングは実にスムーズ